広島は世界でも有数の牡蠣の産地で、日本国内でも全体の約6割と圧倒的な生産量を誇る、牡蠣の街だということは知られているが、そんな牡蠣文化の中心地でも意外と知られていないことがある。それは、広島で生牡蠣を食べる文化が生まれたのは近年になってからのことだということ。地元の人は土手鍋や焼き牡蠣、カキフライを食べるということが多く、一般的にはあまり生牡蠣を食べてこなかったのだという。
これまでは1年のうち11月~5月しか出荷できなかったことや、牡蠣を養殖する海域などさまざまな要因があったようだが、近年夏でも出荷できるようになったり、清浄海域で育てる牡蠣の品質が向上したことなどもあり、広島産生牡蠣が増えてきた。そのため、オイスターバーも広島にはあまりなかったのだが、広島におけるオイスターバーの先駆けとしてオープンしたのが、この『MABUI』だ。この袋町店のほか、近くの一号店である並木店、最近では広島駅前にも3店舗目をオープンした人気店だ。
こちらの特長といえば、何と言っても地元・広島と他の産地の生牡蠣の食べ比べの楽しさだろう。オイスターバーはどこもいろんな産地のものが楽しめるが、これだけ広島産が充実しているのは地元ならでは。たとえば、取材当日なら広島県産が3種類のほかに北海道、岩手、兵庫、三重、佐賀産の牡蠣があったが、味わいが全く違う。広島は塩味が強いのに対し、比較的近いはずの兵庫ではまろやかで、北海道産になるとかなりクリーミーになる。広島に来たからといって近い海域ばかりにせず、違うエリアのものを食べてみることをオススメする。