神戸を代表する老舗雑貨店やショップが連なるトアウエストの一角。シンボルツリーが店内中央に建つ、ビル2階のナチュラル空間はカフェではなく、中国料理店。正統派の老舗中華が多く、創作色を強く出した中華が少ない神戸に勝負を挑んだのは、全国津々浦々で経験を積んだ市川涼平さん、35歳だ。
市川さんは幼い頃見た「料理の鉄人」の豪胆な中国料理に憧れ、料理の道へ。調理師専門学校を卒業後、「鉄人の店で働きたい」と脇屋友詞シェフ率いる『Turandot 遊仙境』でヌーベルシノワを1年半学び、その後も姉妹店で経験を積んだ。さらに「将来、店を開くために、他の料理の技術も学びたい」と考え、石川県の名旅館『加賀屋』や鎌倉の小料理屋で和食を、名古屋では洋食やパン技術も会得し、大手居酒屋チェーンでも修業。まさに“急がば回れ”のスピリッツで、多種多様な店で幅広い技術を身につけた。
そんな市川さんが、開業の地に選んだのは古くから中国料理に親しむ土壌がある神戸。「この地は、昔からの名店がほとんどで一風変わったヌーベルシノワがほとんど無い場所。こういう料理もあると、知ってもらいたいと考えました」と話す。