北新地永楽町通りにあるビルの2階。黒をベースにしたモダンなカウンターメインの割烹『いわき』がある。ご主人の遠藤亮一さんは、大阪屈指の料亭『船場吉兆』と名割烹『浪速割烹 㐂川』の両店で腕を磨いた強者。8年前に開店し、7年連続ミシュランガイドで一つ星として掲載されている。
遠藤さんは福島県いわき市の出身。店名の『いわき』は故郷に由来している。両親が共働きだったことから弟たちに食事を作ることが多く「自分が作った料理を食べてもらう嬉しさを知りました」という。東京の辻調理師専門学校を経て、当時日本料理の主流であった関西へ。『船場吉兆』で13年経験を積んだ。「魚が触られるようになるまで7、8年と歩みは遅い修業でしたが、しっかりと価値のある仕事が身に付いたと思います」。その後、『㐂川』で、初めて表に出る仕事を経験し最初は戸惑ったものの「やり取りの中で作られていくライブ感や魅せる仕事を学びました」。
独立の際は、「培ったことをベースに、“自分の料理”をしたい」と、すべてを一人でまかなえる席数とした。「コースなのでやり取りの中で作っていく割烹の本意ではないかもしれませんが、カウンターもフラットにし、すべてを見せるようにしています」。料理はできる限りの仕込みをし、仕上げは客前で。「炭火で焼く香り、焼いた魚のパチパチと脂のはねる音、揚げ物の揚がるさまなどライブ感は伝わっていると思います」。