特集 / 初秋の播州路でならではの味覚を味わう小旅行へ
牡蠣と穴子。二つの顔を季節で使い分ける老舗。

兵庫

2018年9月17日

牡蠣と穴子。二つの顔を季節で使い分ける老舗。
明石市と姫路市の中間、播磨平野の東部に位置する高砂市は、東に加古川が流れ、南は播磨灘に面し、古くから漁業を中心に繁栄した街。「高砂や、この浦舟に帆をあげて」とおめでたい謡曲で知られるこの地の、相生の松と縁結びで知られる高砂神社の北西に、大正9年創業の老舗料理店『かき幸』がある。牡蠣と穴子を半年ずつ、主にコースで供している。
店の看板、焼き穴子。「数をこなすと粗くなりがちですが、手を抜かずにコースでは必ず焼きたてを供します」。
店の看板、焼き穴子。「数をこなすと粗くなりがちですが、手を抜かずにコースでは必ず焼きたてを供します」。

初代店主が、広島の安芸郡矢野町大浜より専用船で牡蠣舟を高砂堀川港へひっぱって持ってきたのが店の起源。戦後は一時廃業したものの、昭和37年に高砂の地で再興した。「戦前はお座敷ができあがる組み立て式の屋形舟だったそうです」と話すのは三代目主人、61歳になる濱尾秀生さん。調理師学校卒業後、実家や親戚の牡蠣料理専門店で日本料理に携わる。26歳の時には縁あって、西ドイツのベルリンへ。ステーキと日本料理の店で約2年間経験を積んだという異色の経歴の持ち主。「食文化も全く異なる遠い地でだからこそ、改めて“食材あっての料理”と認識しました」。

「半年ずつ素材が変われば、仕事に飽きがこなくてよいですよ」と笑う濱尾さん。
「半年ずつ素材が変われば、仕事に飽きがこなくてよいですよ」と笑う濱尾さん。

そもそも高砂では「高砂あなご」として穴子が名産。播磨灘から明石海峡一帯で獲れた穴子は一年通じて美味で、豊富な滋養が重宝され、祭事のお供え物としても用いられてきたとか。特に、濱尾さんが「最も穴子の素性が分かる」と話す、焼き穴子が名物として知られている。年に1回、初夏には「高砂あなごウィーク」として、高砂市内の加盟店でさまざまな穴子料理が楽しめるイベントも開催されるほど。濱尾さんはそのイベントを取り仕切り、「高砂あなご」の魅力を地元の人々や観光客にも広めている。

穴子の飯蒸し。穴子料理コース5,500円では前菜に続く品。蒸したもち米に、30分ほどかけて霜降りにした後煮込んで味をつけた穴子をのせた。
穴子の飯蒸し。穴子料理コース5,500円では前菜に続く品。蒸したもち米に、30分ほどかけて霜降りにした後煮込んで味をつけた穴子をのせた。

店では、乱獲や海質の低下でめっきり獲れなくなった地元の穴子を、ない場合は長崎産などその時々に出来るだけ良いものを使用。大きすぎると骨があたるので、身の厚みも程よい30~40㎝の穴子を厳選している。特にコースの焼き穴子は、お客様のタイミングを見計らって、焼きたてを提供するのが濱尾さんの信条。公にできないが、タレの味を染み込ませつつ焼き上げる高砂独自のスタイルで、ガスの直火を使い焼き上げる。パリッと香ばしい皮目とふんわりとした程よい脂が感じられる身のバランスが絶妙だ。また、昼食にも人気の穴子重は、うまみ充分な穴子、穴子の脂の質や量を見極めて日々微調整するタレと、富山産ひとめぼれが一体となっている。

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