特集 / 1300年の都・奈良で出逢った新世代レストラン
心に響く料理を探求する若き料理人の躍動。古都ならではの季節を感じ、旬を味わう

奈良

2018年4月16日

心に響く料理を探求する若き料理人の躍動。古都ならではの季節を感じ、旬を味わう
奈良の魅力は、自然と調和し、長い歴史の中で磨かれた質朴な美。華やかな京都の風雅に比べると、やや地味な印象は払拭しがたいが、心を落ち着けてゆっくりと眺めることで、その良さが心にしみてくる。通うほど、その魅力に引き寄せられ、季節を変えて訪れたくなる。四季の味わいを楽しむならば、やっぱり和食がいい。
若干33歳で独立した清水唱二郎さんの店『奈良 而今』には、伝統的な日本料理を大事にする心と、若い意欲が満ち溢れている。

近鉄奈良駅前から北へ延びるアーケード「ひがしむき商店街」の北側、通称「きたまち」エリアは、ここ数年、新店が増えている注目エリアだ。花芝商店街を抜け、右に折れるとお店の外観が見えてくる。界隈には、奈良女子大学もあり、比較的人通りの多い一画だ。

カウンター席からの眺めはエンターテインメント

暖簾をくぐり、店の中へ入れば、磨き込まれて光るカウンター席が続く。店の奥には、個室がふたつ。4名と6名まで利用できるが、ここでは店主、清水さんの手作業やライブ感あふれる調理姿を眺められるカウンター席がおすすめだ。

すべて見渡せる完全なオープンキッチンだからこそ、美しい仕事が求められる
すべて見渡せる完全なオープンキッチンだからこそ、美しい仕事が求められる

料理はおまかせのみ。昼は5,000円、夜は12,000円。ただし、昼は木曜、金曜、土曜のみの営業。常連客から絶大な人気を誇るランチは、半年先まで予約で埋まっているとのこと。7~8品で構成される献立は、お値打ち感も高く、次の予約を入れて帰るお客が多いのだとか。夜の献立は、9品ほどの構成。食後には、清水さんが立てる抹茶も楽しめる。

今回は、夜の献立からご紹介する。「先付です」と、そっと差し出された料理のなんと涼やかなこと。生のミル貝に、雲丹、花山葵のおひたし、天にはウドのせん切りを添え、木の芽で香りをつけた。土佐酢のジュレを絡めていただく。

  ミル貝と雲丹の甘みを、土佐酢のやわらかな酸味が引き立て、花山葵のピリッとした辛みが味を引き締める。さわやかな味わいで食欲がかきたてられ、ミル貝と雲丹の上質さから目利きの良さが伝わり、この後の期待がふくらんでいく。

ガラス器を用い、涼やかな演出。観光で歩いたあと、冷えたビールに合わせて味わいたい
ガラス器を用い、涼やかな演出。観光で歩いたあと、冷えたビールに合わせて味わいたい

オープン早々から人気を博したのが、続く八寸。季節のあしらいが施された盛り付けは、奈良の雅を感じさせ、細かな手仕事による料理が盛り付けられる。この日は、子持ちイイダコの桜煮、うすいえんどう、鯖寿司、厚焼き玉子と菜の花、ホタルイカとコノコのソース、榛原牛と八尾若ごぼうのしぐれ煮。

定番の鯖寿司は、脂のりがいい鯖を使い、絶妙な酢加減で人気の一品に。しぐれ煮にした榛原牛は、奈良の高級ブランド牛。大阪・八尾の特産品「八尾若ごぼう」と合わせることで、春らしい仕立てに。 イイダコ、うすいえんどう、ホタルイカなど、食材の「盛り」を大事にし、本来の味わいを引き立たせる料理こそが、清水さんの目指すところ。その想いが伝わる料理の数々をゆっくりと味わいたい。

2人前を一皿に盛り込むこともあり、その見栄えたるや、一見して歓声が上がるほど
2人前を一皿に盛り込むこともあり、その見栄えたるや、一見して歓声が上がるほど
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