関西方面に暮らす私たちにとって岡山あたりまでは意外と近場という印象はあるが、広島となるといきなり異文化の街に降り立った気分にならないだろうか? それは、おそらく広島弁の単語やアクセントが関西のそれとは大きく異なるからだろう。近いようでいて遠い、あまり馴染みのない広島の街。年間を通して穏やかな天候に恵まれ、瀬戸内の海の幸と中国山地の山の幸が豊富にとれる中国地方最大の都市。素材の味を知り尽くした地元民が認める実力店は驚くほどハイレベルだ。知らなかった広島。その魅力に浸っていただきたい。
島育ちの大将が握る、瀬戸内海の幸『鮨 稲穂』
広島最大の飲食街・流川。スナックなどが居並ぶ雑居ビルに、その鮨店はこっそりとある。良い店は秘密にしておきたいものだが、人の口に戸は立てられない。店主の三原美穂さんの信条は「料理とは、理を料ること」。一貫一貫を考え抜いて握る「理の鮨」が今、広島の鮨マニアたちの評判を呼んでいる。
創業44年の実力店で天然ジビエと山の幸を味わう『猪鮎山菜料理 深山』
広島市街のメインストリート「本通」に、カープ選手も足繁く通う魅力店がある。まだ「ジビエ」という言葉が浸透していない昭和の時代から、天然物の広島の山の幸だけを提供し続けてきた名店だ。広島と言えば瀬戸内海の魚介ばかりに目が行きがちだが、ミネラル感に溢れるジビエ群や山菜類も広島名物であることを知ってほしい。
ストイックなまでに、香港の海鮮料理を求道!『香港海鮮料理 せがわ』
中国料理ではなく、香港料理の専門店だ。店内には生け簀があり、蟹やアワビ、オコゼなどがズラリと揃う。広島でこれだけ香港と海鮮に特化した店は、おそらく唯一だろう。それ故に個性が突出しており、もし炒飯や酢豚をリクエストしたなら「他の店へどうぞ」と言われるかもしれない。しかし、そういう確固たるポリシーを持った料理人が、往々にしてうまい料理を作るものだ。
地元食材にフォーカスを当てたフランス料理『レストラン タイラ〔中国5県産地食〕』
広島市の繁華街から少し外れた閑静なエリア、中区十日市町に、本物を知る大人だけが通うフレンチレストランがある。中国地方の食材に特化したテロワールの溢れる店で、訪れれば広島をはじめとした珍しい地産食材との出逢いが待っているだろう。
イタリアを具現するような非日常のイタリア料理を『イプシロン』
広島平和公園から、賑わう街なかとは逆方向に15分ほど歩いていくと、小さなイタリア料理店がある。小体のメリットを活かし、「リストランテの味」を抜群のコストパフォーマンスで提供してくれる。パスタやデザートには力を入れているからか、特にイタリアン好きの女性から高い支持を集めている。