捌いた丸鶏を、焼鳥と水炊きの店で余すことなく使う
福岡の鍋料理といえば、もつ鍋と水炊き。いずれも一年を通していただくけれど、やっぱり寒い時期は食べる頻度が高くなる。
この店のメニューはいたってシンプル。「水炊き」「唐揚げ」と、締めの「雑炊」と「素麺」、そしてデザートのアイスクリームのみ。お昼から通しで営業しており、旅行客にはありがたい存在だ。
小林さんは、スタッフとともに毎月500羽以上の鶏を捌いている。1羽を25種類の部位に解体し、焼鳥に使うものと水炊きに使うものを分けていく。
お通しは「鶏のごま和え」。茹でた胸肉にかけられたゴマは、京都から取り寄せているつきごま。突くことで脂が出るため香りがより豊かになるのだそう。
しばらくすると、水炊きの鍋が運ばれてきた。 まずはスープをいただく。水炊きのスープといえば、白濁しているものも多いが、『橙』のスープは透明だ。
「スープは自分たちが捌いた鶏ガラだけを使います。臭みを消すためのネギや生姜は一切使っていなくて、このスープには、鶏から抽出されたうまみとごく少量の塩だけしか入っていません。スープがシンプルだから、少し塩を入れるだけで味が決まるんですよね」
口に含んだ瞬間、鶏そのもののうまみが沁み渡り幸せな気分に。お代わりをしたくなるが、そこはこの後のためにぐっと我慢した。
部位ごとに異なる味や食感を楽しもう
鍋には、モモ、スネ、手羽、胸肉という4つの部位が入っている。これらの部位は、それぞれに美味しくなるまでにかかる時間が異なるため、事前に部位ごとに下茹でしているという。
1皿目はスネとモモ。もともとこの2つの部位は1枚のモモ肉からなっている。軟骨を間において上の部分がモモ、下の部分がスネ。
2皿目は手羽と胸肉。それぞれの部位の特徴をスタッフが説明してくれるが、こうした部位の違いを楽しめるのも、この店だからこそ。