大阪市営地下鉄谷町九丁目駅の近くにある高津宮(こうづぐう)は、大阪人にとって「住吉大社」「大阪天満宮」と同じくらいなじみが深く、歴史ある神社だ。
高津宮はさまざまな物語や伝統芸能の「名場面の地」にもなっていて、ここを訪れる芸人は多く、また大相撲春場所になると近くに宿舎を置いている部屋の力士がここの石段でトレーニングする姿も見かける。
主祭神は仁徳天皇。世界遺産の国内推薦を得た「百舌鳥・古市古墳群」の中でも最大の仁徳天皇陵古墳(諸説あるが)に祀られている当人だ。
上方落語にはこの高津宮が舞台となる「崇徳院(すとくいん)」「高倉狐」「高津の富」という有名なネタがあり、とくに「高津の富」は本殿前に貼り出された富くじの当せん番号を、当たりくじを持っている(とは認識していない)主人公が何度も復唱するくだりがクライマックスだ。噺家にとってはこの「間」をどうつくるかが腕の見せどころで、大阪人にはおなじみのシーン。
そのような、実におめでたい場所の境内に、「木立」を意味するカフェレストランがあり、夜遅くまでにぎわっているという。難波から徒歩でも15分。紅葉の時期にわざわざ京都や奈良に行かなくても、こんな至近距離で味わえるならうれしいことこの上なしだ。