指折りの観光名所「兼六園」の南側出入口「小立野(こだつの)口」から、小立野通りをまっすぐ進む。江戸時代、一向一揆に備えて集められた寺院群のひとつ「小立野寺院群」の南端に位置する、100体以上の石仏が並ぶことでも知られる「如来寺」山門の手前。2015年3月にオープンした『ぱんや むぎこ』がある。
店舗は、木材を多く使いアンティーク風の小物を配した、ナチュラルな雰囲気。お母さん方や家族連れが次々に訪れ、店内がいっぱいになることも珍しくない。いくつもの大学が建ち並ぶ、アカデミックなエリアでもあるため、客層は幅広い。
京都で学んだ技術を地元で
オーナーの渡邊沙織(わたなべさおり)さんは生粋の金沢っ子。人気の店が数多く点在する、実はパン屋激戦区の金沢で店を開きたいと、多くのパン屋がひしめく京都を修業の地に選ぶ。京都市内で2店舗を展開する『ブーランジェ オクダ』で数年間みっちり腕を磨いた。 「パン好きにとって、京都はとても楽しい街。充実の日々が過ごせました」と話す。帰郷し、出店場所として選んだ小立野は、「自宅が近いこともありますが、学生さんが多いにもかかわらず、パン屋さんがない。迷いはありませんでした」。狙いは的中。瞬く間に人気パン屋の仲間入りを果たしている。
菓子パンから総菜パン、ハード系、天然酵母を使うパン、数十種類が並ぶ店内には、いつも焼きたての香りが漂う。一番人気は1個150円のクリームパンだ。「修業先の『オクダ』さんも、クリームパンが人気でした。そのレシピを参考にしましたが、金沢っ子の嗜好に合わせ、甘みや塩分を控え、あっさりした味わいに仕上げています」と明かす。ポイントは、40gの生地に対して100gも詰め込む自家製カスタードクリームだ。
地元産、味が濃い卵の黄身をたっぷり使い、リッチなテイストに仕上げるカスタードクリームをびっくりするほどたくさん詰め、うす~く伸ばしたふんわり生地で包む。赤ちゃんのほっぺたのような焼きたてをほお張ると、クリームがあふれ出してきた。これが150円! 正直、安すぎるのではなかろうか?