古美術店が軒を連ねる新門前通から白川に抜ける小道沿いに『白川 たむら』はある。通りに面した部分には屋号らしきものはなく、奥まったアプローチにさりげなく店名が掲げられているため、つい通り過ぎてしまう人も。この奥ゆかしさも祇園らしさだ。
大阪の“話題の名店”でも修業する
店主の田村尚重さんは、西陣の料亭『萬重(まんしげ)』に生まれた。料理人を志し、高台寺の『修伯(しゅうはく)』で修業をしていた十数年前、一つの出逢いに恵まれる。
「当時、モダンスパニッシュの旗手として話題をさらっていた『Fujiya1935』の藤原哲也シェフが食事に来てくださったんです。『修伯』の吉田修久さんはすごい律儀な方なので、来店の返礼に必ず食事に行かれるのですが、『Fujiya1935』さんのお料理には特に感動があったようで…。お前らもぜひ行くべきだと言われたので、私も行きました。そして見事にハマりました」と田村さんは懐かしそうに話す。
『修伯』で腕を磨く傍ら、休みの度に『Fujiya1935』に通っていたところ、「度々来てもらうのは嬉しいけど、あまりに頻繁過ぎて、田村さんのためだけにメニューを変えなくちゃいけないのが困る、って言われてしまって…」と苦笑する。なら、いっそのこと働かせてとなり、2年半在籍。その後、従兄弟が営む『レストラン田むら』にしばらく勤め、2014年6月に『白川たむら』をオープンさせた。