小倉駅から東へ。門司方面に向かって、クルマで約5分。平成初期までは路面電車・西鉄北九州線の砂津電停や砂津車庫があり、小倉における交通の要衝の役割も果たしていた街にひっそりとたたずむ『創作懐石やす多゛』。暖簾をくぐり店内に入ると広々とした空間で、廊下の左右に配置された個室の前を通り白木の立派なカウンター席に腰を据える。
「創作」と言われる類の料理はレンジが広く難しい。しかし、確固たる技術と経験の上でオリジナリティのある料理は感動を覚える。ここ『創作懐石やす多゛』の料理は、王道の日本料理の真髄を知る料理人がさらなる美味を求め正当に進化したカタチとなって目の前に現れる。
懐石とは、本来修行僧が空腹と寒さに苦しんでいたときに暖を取るために懐に「温石」と呼ばれる温めた石を入れたのが始まり。そんな空腹を満たすための少しの料理と意味が変遷した。そして、それは現代の茶懐石においても少しずつの料理をいただき、最後に食事という流れとなっている。また、懐石の三大原則は「旬の食材を使う」「素材の持ち味を生かす」「心配りを持ってもてなす」というもので、それらの基本を守りつつ、さらに美味しいものを提供しようというのが、この店のあり方だ。