「京都中華」や「舞妓中華」とも呼ばれる、京都独自の中国料理を知っているだろうか。その代表格の一軒として知られるのは、祇園新橋の橋のたもとに店を構えて52年になる広東料理店『竹香』だ。江戸末期から明治初期にかけての町家が今も立ち並び、石畳の京都らしい風情漂う場所柄も手伝って、一見、手が届かないのでは?と思いがちな品あるたたずまいだが、扉を開けば、アットホームな雰囲気にほっと安堵できる。
「元々は血のつながりのない祖母が富永町で『竹香』という名で旅館を営んでいました。初代である父が中国料理店を開くことになって、今の場所に移ってきました」とは女将の永田由美子さん。初代は四条『芙蓉園』で修業後、独立。「開店当時は、花街という場所を考慮してニンニク、ショウガ、ネギ、玉ネギは使用しませんでした。仕事前の女性に召し上がっていただけるように、との想いからです。油、香辛料、香りの強い素材も避けていました」。
現在は、女将のご主人、永田真司さんが料理長として厨房を取り仕切る。大学は工学部を専攻し、マンドリンコンクールで日本一になった経歴を持つ。コンクールの費用を稼ぐためアルバイトで『竹香』に入り、仕事の面白さにはまり、料理人の道へ。大阪の中国料理店や宝ヶ池プリンスホテルなどで5年間修業を重ねた。初代が『竹香』の味として創りあげた、子どもからご年配までが楽しめる“優しい味”を受け継いでいる。その代表品が「はるまき」と「すぶた」だ。