「明石海峡よりも潮流が激しい」とも言われる下津井沖。潮流に流されないように岩などにしがみつくためか、この地域のタコは他のそれよりも脚は太くて短く、マッチョタイプが多いという。
瀬戸大橋のそばにある小さな漁師町・下津井は、蛸壺や疑似餌を使ったタコ漁が盛んな町。最盛期は5月で、産卵期の9月のみ資源保護のため禁漁となる。そのタコを水槽に蓄え、タコ料理専門店としているのが『保乃家(やすのや)』だ。
さっそくタコ目当てに店に行くと、取材時はまだ最盛期前でも『保乃家』には大物たちが待機中だった。
タコの生命力に脱帽しきり
さっそく二代目・原隆さんが水槽から取り出したタコを持って見せてくれた。
その急所を突いて締め、手で口ばしをちぎり取る。胴から脚を外しながらそっと内臓を外す。太い脚を切り分けると、まだうねる。まな板の上にのせると吸盤で吸い付く。その習性を利用して皮と吸盤と身にさばいていく。
まずは、吸盤の付いた皮だけをさっと湯がいて食べるイボ酢。義母の前田鶴代さんが担当だ。売ってくれと言われても断り続けた特製三杯酢がタコの味を引き立てる。 たこの真子(写真・吸盤の左上)や白子(吸盤の右)も入ることがある。写真のように吸盤がキレイに並んでいるのはメス、ランダムな大きさと配置であればオスだ。