特集 / 大阪・桜の季節に伺いたいあの店へ
店主の思いが溢れた蕎麦と蕎麦前を名刹参りの後で。

大阪

2018年3月19日

店主の思いが溢れた蕎麦と蕎麦前を名刹参りの後で。
日本仏法最初の官寺でお参りとお花見が一度に体験できるとは。日本書紀には593年に立てはじめられたと記される聖徳太子建立寺の一つ。子どもの頃には「六時堂」の前の「亀の池」の印象が鮮烈であったが、花見の季節には境内に約140本もの桜が咲くという。有料の本坊庭園「極楽浄土の庭」の桜もことさら美しい。
四天王寺の桜は大阪城や大川のそれと違って「圧倒的なボリューム」ではない。そこがまた古刹らしくて情緒がある
四天王寺の桜は大阪城や大川のそれと違って「圧倒的なボリューム」ではない。そこがまた古刹らしくて情緒がある

『はやうち』は、ビジネス街や住宅街などを中心に関西一円から静岡にも出店している『土山人』で約10年間研鑽を積んだ店主・早内俊二さんの店。旧い町家風に改装した店内は、土壁や旧い梁などが渋い魅力を放ち、落ち着いた空間だ。

「カウンターのある店にしたかった」と話す。料理や蕎麦についての対話がある蕎麦屋を目指してのことであり、全ては食べ手の満足感を満たすためなのだ。

参拝の後にこんな空間が待っていると思うと、ほっとする
参拝の後にこんな空間が待っていると思うと、ほっとする

店先で打つ蕎麦は、福井の丸岡や富山、長野、茨城などから玄蕎麦(殻の付いたままの蕎麦の実)を秋に買い付け、真空パックで温度管理し保存しながら使用する。

見事な細打ちの職人技。トントントンと蕎麦を切るリズムも一定で見る間に蕎麦が生まれていく。その所作を含め、いつまでも眺めていたくなるほどだ
見事な細打ちの職人技。トントントンと蕎麦を切るリズムも一定で見る間に蕎麦が生まれていく。その所作を含め、いつまでも眺めていたくなるほどだ

実際に産地まで足を運び、その出来栄えを確かめて仕入れるというこだわりぶり。また、修業先の『土山人』や京都の『じん六』など、同業者からも丸抜き(玄蕎麦を割らずに丸のまま黒殻を取り除いたもの)の蕎麦を分けてもらうこともあり、時に鹿児島や北海道、東北産の蕎麦粉を用いることもある。

まずは一献、選りすぐりの日本酒と蕎麦前を愉しむ

こだわりは蕎麦のみにあらず。開店当初から一品料理を揃え、今では季節の料理も増え続けている。料理や蕎麦に合う日本酒も常時15種類ほど揃える。銘柄を注文するのではなく基本おまかせ。好みを伝えればそれに見合う酒を提供してくれる。

日本酒はグラス630円。冷酒、常温、熱燗が選べる。
日本酒はグラス630円。冷酒、常温、熱燗が選べる。
当日は秋田県山本郡八峰町の白瀑・純米吟醸生原酒「山本」ミッドナイト・ブルー。同銘柄のブラックがキレある味わいに対して、こちらは香り芳醇で穏やかな味わい
当日は秋田県山本郡八峰町の白瀑・純米吟醸生原酒「山本」ミッドナイト・ブルー。同銘柄のブラックがキレある味わいに対して、こちらは香り芳醇で穏やかな味わい

定番のにしん煮一つとっても、驚くほど手間暇をかけ丁寧に仕込む。半乾燥のニシンを北海道余市から仕入れ、水戻しした後に米ぬかで炊いた後、鍋で煮て味を入れる。そのまま鍋で煮続けるのではなく低温で何度かに分けて味を含ませることでふっくら柔らかく美しく仕上がる。何度も火を入れては休ませて2~3日かけて仕上げるというから驚く。
東京の蕎麦店で食べた味に感動し「これは蒸し煮にしている」と気づいたそう。そのイメージを元に試行錯誤を繰り返しながらたどり着いた定番の品だ。

にしん煮800円(税込。以下同)。煮崩れることなくふっくらとした仕上がりに、脂のノリも旨みも豊か。これで一体何合飲ませるのかと思えるほどの酒肴
にしん煮800円(税込。以下同)。煮崩れることなくふっくらとした仕上がりに、脂のノリも旨みも豊か。これで一体何合飲ませるのかと思えるほどの酒肴

料理は定番の10種類に加えて計15品を仕込む。中にはフランスシャラン産鴨を使った鴨ロースなどもあり、心ゆくまで蕎麦前が楽しめるとあって、特に夜はゆっくりと過ごす常連も多いという。

本日のおすすめの一品より、なめこおろし和え430円。石川県白山の大ぶりのなめこをさっと茹で、そばつゆに漬けておく。プルリとした辛味大根がアクセント
本日のおすすめの一品より、なめこおろし和え430円。石川県白山の大ぶりのなめこをさっと茹で、そばつゆに漬けておく。プルリとした辛味大根がアクセント
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