特集 / 寒いからこそ美味しい、京都の冬グルメ
食材重ねの名手が移転。独自の料理観がますます冴える

京都, 12月

2017年12月18日

食材重ねの名手が移転。独自の料理観がますます冴える
銀閣寺の近くに1軒のレストランがオープンしたのは2010年のこと。京野菜をはじめ、各地の食材を自在に組み合わせ、イタリア料理の概念をあざやかに覆してくれる皿の数々に出合えると、瞬く間に人気店に。そして、7年目になる2017年9月15日、中心部への移転を果たす。町家らしい風情を生かしてリノベーションされた建物は和食店に見紛う佇まいだ。
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地下鉄「丸太町」駅から歩いて数分の好立地

左端の壁に掲げられた、楓をモチーフにした看板が目印。京都らしい路地を進むと入口がある。扉の向こうには、和の雰囲気を残した寛げる空間が広がる。ちなみに路地を進むと中ほどには厨房があり、さらにその奥は小さな菜園になっている。オリーブの木が数本、イチジクなども植えられており、ハーブ類はここで採れたフレッシュな物がしばしば使われる。

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奥が深い、典型的な“鰻の寝床”構造
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和風の建具を効果的に配したテーブル席

笑顔が素敵なシェフ夫妻の心地良いもてなしを

オーナーシェフの中本敬介さんは広島県出身。地元と東京のレストランに勤めた後、イタリアに料理留学。卒業後、各州のレストランで腕を磨き、スイスの有名レストランに8年間も在籍。後年は料理長を任される。計12年、ヨーロッパで暮らした後に帰国。京都で自店をオープンさせた。

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サービス担当は奥様の理恵子さん

6,570円のランチコース(税サ込)は、黒米とキノコのクロッカンテで幕を開けた。黒米を炊いて上新粉を加え、薄く伸ばしてから蒸して干して揚げたものに、タプナード(黒オリーブなどで作るペースト)をひと塗り。その上に、マッシュルームやポルチーニ茸のスライスを散らすという、手間をかけたアミューズだ。黒米のクリスピー感、茸の豊かな香りが空腹を増進させる。

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多くの手間が掛けられているが、手で持って一口で

続いて登場したのは鯵の前菜。塩もみしてから10日ほど置いて熟成させたキュウリに、自家製ピクルスを加えて仕立てたソースは、甘酸っぱさの中にシャリシャリした食感が混じる。トマトのエキスで作るソルベが淡雪のように口どけ、鯵の風味とのど越しの良さを引き立てる。

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手前の緑が熟成キュウリのソース。奥がソルベ。軽く混ぜて

スープは目の前で完成させる。カーボロネロと呼ばれる黒キャベツ、クレソンなどが盛り付けられた器を注視すると、合間にはアオリイカの身、すり身にしたイカにイカスミを加えて作るムースが。そこにシェフがスープを注ぎ入れると、イカの豊かな風味がパッと広がる。「トスカーナ地方の名物料理である、リボリータをイメージして作りました」。熱いスープを浴びることで軽く火が入った、野菜やハーブの多彩な歯ごたえが五感を刺激する。

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スープが注がれた状態。中央の黒っぽいものがムース
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