「新しい料理の発見は、新しい星の発見以上に人類を幸せにする」。ご存じ、フランスの歴史的美食家、ブリア・サヴァランの箴言(しんげん)だ。
そしてこの日本料理店、『北新地 弧柳(こりゅう)』では星、どころか通えば銀河にある星の数ほども、新たな幸せに包まれるとさえ、思えるほどである。
そしてこの日本料理店、『北新地 弧柳(こりゅう)』では星、どころか通えば銀河にある星の数ほども、新たな幸せに包まれるとさえ、思えるほどである。
関西の夜の商工会議所とも言われる北新地・堂島。政財界の要人が通う敷居の高いダイニングがビルの中に、秘密めいた小さな看板を掲げるこの街。歓楽街としての歴史は江戸時代初期にまで遡り、かつては豪商・淀屋の米市の場所として、また近松門左衛門の名作『心中天網島』のヒロイン、小春が住んだ街としての歴史もある。
その中で、南から二番目の通り、堂島中通の角地。ひかえめながらも無防備なほど分かりやすくゆれる暖簾の奥に待つ料理は、さりげない店の佇まいの真逆とも思えるほど、アグレッシヴなものだ。主人、松尾慎太郎さんは、大阪、法善寺の神話的名割烹『㐂川』で長年二番手として活躍。2008年にこの地で独立を果たした。店造りは飾り気のないミニマルなもの。カウンター12席のみの小さなフロアは、華美さもなく「『ミシュランガイド』で三つ星として掲載される店の中で、最も庶民的な店構えの日本料理店」との世評にも、やんわりと共感できる。