大津の中心部、県庁からほど近い場所にある京町は、東海道五十三次の52番目の宿場町・大津宿のあった場所。東海道五十三次中最大の宿場であった街だけに、いまも古い町並みが残っている。その中でも特に立派な建築で存在感を放っているのがこの『大津 魚忠』だ。もともとは呉服商が明治38年に建築したもので、日露戦争を挟んで4年の歳月をかけて建築されたものだという。現在、国の登録有形文化財に指定されたこちら、なんと言っても見ておきたいのは、植治こと七代目小川治兵衛による奥庭。平安神宮神苑や円山公園、無鄰菴数々の名園を作庭した植治の作品を独り占めできるだけでも価値がある。
現在、この名建築を所有する『大津 魚忠』もこの地で現在3代目となる歴史ある店。西隣の町で仕出し・料理屋を長年営んでいた。現在の店舗は、店主・橋本忠司さんは昔から知っていた場所だったが、縁があって引き継ぐことになったのが22年前。歴史ある建築で維持するのも大変であるが、古いものが好きで、昔からかっこいいと感じていた建物でもあったので、店をこちらに移転することにしたのだという。移転する前は、法人・官庁関係需要中心で、看板も暖簾もメニューもなかったような由緒ある店だったが、現在は敷居を下げて、一元客でも入りやすくした。