福山市内でも駅から少し離れたこちらの昭和町というエリアは、深夜まで開いている飲食店が軒を連ねる大人の街。そんな界隈にあって、その味と使い勝手の良さで、多くの食通から支持されているのがこの『和食屋 夜咄』。料亭や割烹ほど敷居は高くなく、かといって居酒屋のようにカジュアルすぎるわけでもない、近所に一軒あればちょうどいいと思わせるような和食の店だ。
店主の石岡一馬さんは、地元・福山出身の45歳。2004年3月に開業し、来春には開店15周年を迎える。飲食店の新陳代謝が活発なこの福山では、もはや古参といえる存在となった。実際、地元客のみならず、東京などの遠方からこちらを目指してやってくる常連がいるという実力店だ。特に魚の目利き、ラインナップ、仕立てにはさすがと言えるものとなっている。
料理は、単品とコースがあり、おまかせは4,000円~10,000円で1,000円刻みの設定。魚は天然ものだが、地物だけに固執しない。「福山で料理をしていると、アコウやタイといった魚は旬になれば常にどこにでもあります。ですから、地元のお客様にはタイをおすすめしても食べてもらえません」と。そのため、たとえば鹿児島や五島列島など県外の信頼のおける魚屋からの仕入れもする。東京に出すと値上がりしてしまうからと漁師さんが西日本にしか卸さないという、とある魚(店で確かめてください)や、都会だとかなりの値段になってしまう高級魚が驚くほど安くいただけるので、それだけでも魅力だ。