特集 / 1300年の都・奈良で出逢った新世代レストラン
自らハンターとして猟にも出るシェフ。自家製へのこだわり、奈良愛を詰めた料理に感動する

奈良

2018年4月16日

自らハンターとして猟にも出るシェフ。自家製へのこだわり、奈良愛を詰めた料理に感動する
そぞろ歩きをする旅行客の姿も多い、昔ながらの風情が残る「ならまち」界隈。古民家に暖簾をかけた外観は、イタリアンらしからぬ雰囲気だ。しかし、奈良で生まれ育った若手シェフ渾身の料理に、遠くから足を運ぶファンも多い。
皿にのせるものは、できる限り自家製にこだわり、食材を求めて自ら山へ分け入る。その姿勢、そして常に成長を続ける料理の数々に、驚きを隠せない。

古都の雰囲気で味わう奈良にしかないイタリア料理

奈良駅からは、徒歩で15分ほど。奈良公園や興福寺など、中心部の観光地から少し足を延ばすと、古民家が良き風情を伝えている。この「ならまち」界隈は、質朴とした懐かしさが感じられるエリアだ。

暖簾をくぐると非日常の世界へ。軒先には、昔から伝わる庚申(こうしん)信仰のお守りである「身代わり申」も
暖簾をくぐると非日常の世界へ。軒先には、昔から伝わる庚申(こうしん)信仰のお守りである「身代わり申」も

古民家を改装したリストランテらしく、ところどころに和を感じさせるあしらい。料理は、奈良で育まれた食材を用い、和のテイストをさりげなく盛り込む。ランチは2,500円から6,000円、ディナーは6,000円から10,000円と、おまかせのコースのみ。料理の最後には「アンコーラピアット」と称して、リクエストに応じてパスタやチーズなどをお好みの量で提供しているのが特徴だ。

出来上がるまでを目の前で楽しめるのも期待が増す
出来上がるまでを目の前で楽しめるのも期待が増す

若くしてオーナーシェフに。その後は独学で成長を続ける

西岡シェフは、高等専門学校を卒業後、東京で経験を積み、奈良のレストランで店長を務めた後に、『トラットリア ラ・クロチェッタ』をオープン。27歳という若さでオーナーシェフとなり、その後は独学で技術を磨いてきた。加工肉に興味を持ち、生ハムやサラミなどを作るようになり、自家製へのこだわりが強くなったという。

その後、2店目となる『リストランテ・リンコントロ』を2014年にオープン。大型のパスタマシンを導入し、パスタもすべて自家製に。奈良の山間部、都祁(つげ)村の猟師から譲り受けるシカやイノシシを自ら解体するだけでなく、狩猟免許まで取得し、ハンターとして猟にも出かけるようになった。素材の調達から調理まで、すべてにこだわる凄みが伝わってくる。

いつも明るく、ポジティブな印象の西岡シェフ。そのキャラクターに若手シェフからの人望も厚い
いつも明るく、ポジティブな印象の西岡シェフ。そのキャラクターに若手シェフからの人望も厚い

今回はそんなシェフの、ディナー8,000円のコースから紹介していきたい。まずは前菜のひと皿として出される、定番ともいえる加工肉の盛り合わせだ。

右下にあるのが、シカ肉のパテと、ウサギのインヴォルティーニ。その上には、鴨の手羽先をコンフィにしたもの。リンゴとレーズンの赤ワイン煮にカシューナッツを添えて。左側には、イノシシの生ハム、えりも短角牛のブレザオラ、ホエー豚のフィオッキオーナ、イノシシとシカのカチャトーラなど。もちろん、すべて自家製だ。

生ハムなどに添えたフリットは、フキノトウやコゴミなど、シェフが山で採取したものを使っている。
生ハムなどに添えたフリットは、フキノトウやコゴミなど、シェフが山で採取したものを使っている。

イノシシやシカは、奈良で獲られたものを使用しているが、その他の肉は、北海道などから。産地へ足を運び、生産者とのつながりを作ってから仕入れるのが身上。奈良では肉料理のスペシャリスト、との呼び声もあるほど、肉へのこだわりやそのクオリティには定評がある。

熟成によって生み出された肉のうまみ、独特の香りは、ワインを呼ぶ味わい。西岡シェフ自ら選ぶイタリアワインとの相性も抜群だ。乾杯からの流れで、スプマンテの芳醇な香りを楽しみつつ、脂をさらりと流したい。

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