花芝商店街の一画に店を開き、ランチはコースのみ、夜はビストロ料理でアラカルトを楽しむという新たなスタイルに挑戦している。
奈良観光の代名詞、奈良公園や東大寺、若草山などへの玄関口から北へ5分ほど歩けば、『ラ・フォルム・ド・エテルニテ』にたどり着く。
白壁には絵皿が飾られ、温もりを感じる風合いのテーブルとイスは心地良く、身体の緊張もほどけていく。
昼は4,800円(税別・以下同)のコースのみ。美しい盛り付けの料理が続き、時間を気にせず、ゆっくりと食事を楽しみたい方におすすめ。一方、夜になると、骨太なビストロ料理をアラカルトで提供。ワインを片手に、ワイワイと語らいながらの食事にうってつけ。シチュエーションに合わせて使い分けることで、幅広い楽しみ方ができるのは、これまでの奈良にはなかったスタイルだ。
洗練されたコース料理で奈良の旬を
ランチコースからいくつかの料理をご紹介しよう。コースはアミューズから始まり、前菜、魚料理、肉料理、アヴァンデセール、デセールと続く。食後は、コーヒーなどのドリンクとミニャルディーズ(焼菓子)でゆっくりと。
まずは前菜から。越中バイ貝とモサ海老と奈良のお野菜、カリフラワーのムース。バイ貝は、殻ごと軽くゆでてからスライスし、炙ることで香ばしさをプラス。モサ海老の身は生でいただく。取り出した卵とミソは、ヴィネグレットソースに加え、バイ貝や野菜に和えている。
野菜はすべて奈良産だ。今回は、カリフラワー、ロマネスコ、蓮根、菊芋、海老芋、カブ、リーフサラダを使用。生駒市の『ひらひら農園』や明日香村の『たるたる農園』など、生産者から直接仕入れる野菜も多い。「奈良は、野菜が豊富にあるので、わざわざ他県から取り寄せる必要がない。自然に寄り添いながら育てている生産者が多いので、メニューも入手できる野菜に合わせて考えるようにしています」と永野シェフ。
ソースとして添えているのは、カリフラワーのムース。ほんのりとした甘さは自然なままで、バイ貝や野菜本来の味わいを引き立てる役割を果たしている。
肉料理として登場したのは、奈良県産プレノワール。プレノワールは、フランス原産の黒鶏で、大和郡山の「T・ファーム」が飼育したもの。脂質が少なく、肉のきめが細かいのが特徴、風味もあり、ジューシーな味わいが気に入っているそう。生産者の新たな取り組みによって生み出された食材を、早くもメニューに取り入れている。
低温でじっくり火入れした胸肉を、仕上げに表面だけをロースト。やわらかく、しっとりしており、噛むほどにうまみがにじみ出る。フォン・ド・ヴォライユをベースにマデラ酒やバターで仕上げたソースは、鶏のうまみを感じさせつつ、軽やかなあと口で、共に食べることで、風味の広がりが感じられる。