特集 / 大阪・桜の季節に伺いたいあの店へ
今、大阪で発展著しい天王寺に昔ながらの雰囲気でひっそりと佇む老舗

大阪

2018年3月19日

今、大阪で発展著しい天王寺に昔ながらの雰囲気でひっそりと佇む老舗
近年、大阪の中でもその様変わりが激しい阿倍野〜天王寺界隈。
近鉄大阪阿部野橋駅上にそびえ立つ「あべのハルカス」から「天王寺ミオ」をつなぐ歩道橋の上を北に向かいながら、かつてそこに並んだ数々の露天商でおもちゃをせがんだのも今は昔。

JR天王寺駅北口を出て、さらに谷町筋沿いを北上する。 谷町筋を挟んで西側に見えるのは天王寺公園。 その向こう側には慶沢園と大阪市立美術館があるはずだ。

旧い街並みの通りを振り返ると、あべのハルカスの威容が
旧い街並みの通りを振り返ると、あべのハルカスの威容が

大阪市立美術館と慶沢園のあるこの一帯は、元は住友家の本邸があった場所。古くは大坂冬の陣で徳川家康が、夏の陣では真田幸村が陣を構えた場所としても知られているが、明治以降、住友京都本家15代住友吉左衛門友純(すみともきちざえもんともいと/1865~1926)が用地の買収を進め、大正4(1915)年に本邸を移転、同7(1917)年に名造園作庭師・小川治兵衛(1860~1933)の手によって慶沢園を完成させたという。

ところでこの15代目友純、海外への留学経験で様々な事を学び、文化に対して並々ならぬ思いがあったと思われる。大阪市が美術館建設計画を進めるが用地確保で苦心していると聞くと、なんと1万坪あまりのこれらの土地をポンと寄贈したのだ。

またそれ以前、明治37(1904)年に開館した大阪市立中之島図書館建築にも多大な寄付と貢献をしている。さすが住友家と思わせる逸話だが、今から訪れようとする『料亭 まつむら』の成り立ちは、この話と大いに関係している。

この世の大自然を心より楽しむ――「楽天然」と題された玄関が迎えてくれる
この世の大自然を心より楽しむ――「楽天然」と題された玄関が迎えてくれる

建物と庭と食の見事なコラボレーション

さて谷町筋沿いの角を右折し路地を入ると『料亭 まつむら』が見えてくる。 「ここは大正3(1914)年住友保丸分家の大阪別邸として建てられたものを昭和34(1959)年に現事業主に譲られ、当初は平屋建築のみ、2階は増築されたものです」と語ってくれたのは料理長の梅津実さん。

話を聞き続けているうちに先ほど述べた住友家との関係がさらに明らかに。 この大阪でも稀にみる素晴らしい数寄屋建築と庭。その建築は住友本家15代の建築を一手に担った住友総本店技師・日高胖(ゆたか/1875〜1952)、庭は慶沢園を造った小川治兵衛の手によるものだった……。

近代造園のスタイルを確立したといわれる小川治兵衛が造った庭は、四季折々、花に彩られる
近代造園のスタイルを確立したといわれる小川治兵衛が造った庭は、四季折々、花に彩られる

歴史につながりが見えてきたところで料理が運ばれてきた。 我々が通された部屋は「竹梅の間」。

中庭の桜の木が窓から大きく見える
中庭の桜の木が窓から大きく見える
「芙蓉の間」は池の上に立つ離れ。違った角度から桜が見られる人気の部屋
「芙蓉の間」は池の上に立つ離れ。違った角度から桜が見られる人気の部屋

この場所で1本の八重桜を見ながら食事をする気分を考えると気分が高揚してくる。 ちなみに、部屋数は2階の大広間と離れを含め10部屋。 それをつなぐ縁側は全て入側(いりがわ=座敷との間にある廊下)になっており、離れの「芙蓉の間」には茶室があって台目畳(だいめだたみ)が敷き込まれている。

この日いただいた料理は全9品からなる会席コース(8,640円・税込)。

例えば前菜は烏賊を蕨に見立てた烏賊蕨。柚子の皮の中に百合根の甘さを丸めた柚子小袖巻き。 干し柿のバター博多寄せ、鰯たら子焼き、若竹真蒸などが、華やいだ雰囲気を醸し出している。

厳選された素材が絶妙のバランスで配され華やいだ雰囲気
厳選された素材が絶妙のバランスで配され華やいだ雰囲気
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